UNDERCOVER(アンダーカバー)とは?|服ではなくノイズを作れ」高橋盾の矛盾する美

UNDERCOVER dark fashion Brand

UNDERCOVER(アンダーカバー)とは?

項目内容
ブランド名UNDERCOVER(アンダーカバー)
設立1990年(東京)
デザイナー高橋盾(ジョニオ/Jun Takahashi・1969年 群馬県桐生市生まれ)
出身校文化服装学院
拠点東京
パリコレ進出2002年10月(2003年春夏「SCAB」より)
主なラインUNDERCOVER(本体)/ UNDERCOVERISM / The Shepherd / JohnUNDERCOVER ほか
代表的な協業NIKE(GYAKUSOU)、Supreme、sacai
モットー“We Make Noise Not Clothes”(服ではなくノイズをつくる)

「パンクは生き方だ(punk is a lifestyle)」。このステートメントが示すように、アンダーカバーの本質はファッションの表面的な反抗ではなく、支配的な秩序への根本的な不服従として生き続ける姿勢だ。高橋盾にとって、服はその姿勢の物質的表現であり、着用者のアイデンティティの宣言であり、社会との交渉の道具だ。

川久保玲との深い精神的・実践的繋がり(CDGとの長年のコラボレーション関係)、ジル・サンダー時代のラフ・シモンズとの友情と相互影響、コム・デ・ギャルソンのドーバー・ストリート・マーケットでのディストリビューション。これらは、アンダーカバーがアヴァンギャルド・ファッションのエコシステムの重要な節点として機能していることを示す。

UNDERCOVER in Brief(English Summary)

Founded in Tokyo in 1990 by Jun Takahashi — known as “Jonio” — UNDERCOVER grew out of Japan’s Ura-Harajuku scene, where Takahashi and his friend Nigo (later of BAPE) ran the legendary store NOWHERE. Championed by Rei Kawakubo of Comme des Garçons, Takahashi made his Paris debut in October 2002 with the haunting “SCAB” collection. Operating under the motto “We Make Noise Not Clothes,” UNDERCOVER treats punk, literature and decay as material for clothing that is closer to narrative than to product. Its collaborations with Nike (GYAKUSOU) and Supreme have made it one of the most quietly influential names to come out of Japan.

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デザイナー・高橋盾|裏原宿が生んだ「ノイズ」の作者

UNDERCOVERを語ることは、ほぼそのまま高橋盾という一人の人物を語ることである。

高橋盾(通称ジョニオ)は1969年、群馬県桐生市に生まれた。文化服装学院でファッションを学び、在学中の1990年に同窓のデザイナーとともにUNDERCOVERを立ち上げる。学生時代はセックス・ピストルズのカバーバンド「Tokyo Sex Pistols」のボーカルであり、憧れはヴィヴィアン・ウエストウッド。破れたTシャツ、パッチを当てた革ジャン。パンクという出自が、ブランドの根にある「反抗」と「ノイズ」を決定づけた。

転機は二つある。一つは1993年、友人のNIGO(後にA BATHING APEを創業)とともに原宿の裏通りにショップ「NOWHERE(ノーウェア)」を開いたこと。店の半分にUNDERCOVER、もう半分にNIGOがセレクトした輸入古着とスニーカーが並び、ここから後の「裏原宿(ウラハラ)」ムーブメントが立ち上がっていく。日本のストリートウェア史の原点と呼ばれる場所である。

もう一つの転機は、コム デ ギャルソンの川久保玲との出会いである。川久保はUNDERCOVERの強力な支持者となり、東京の外、パリで発表するよう高橋を後押しした。2002年、UNDERCOVERは川久保の人脈を足がかりにパリコレへ進出する。ジュンヤ・ワタナベや川久保玲という「日本の前衛」が、次の世代を引き上げた構図である。

ライン/コラボ解説テーブル

「UNDERCOVER」の名のまわりには複数のラインと協業があり、整理すると入口が見える。

名称位置づけ・特徴
UNDERCOVER(本体)パリコレで発表する本体。テーラリング、ドレープ、グラフィック。物語性の強いコレクションが核
UNDERCOVERISMもとはメンズライン名。2015年に一度UNDERCOVERへ統合され、2021年秋冬に復活した実験的ライン
The Shepherd / JohnUNDERCOVER ほかより日常に寄せた派生ライン群
GYAKUSOU(逆走)= NIKE2010年開始。ランナーでもある高橋とNIKEのランニング協業。名は「逆走(走る向きを逆に)」に由来する高橋個人のプロジェクト
Supreme2015年〜断続的に協業。”Anarchy”トレンチ、ボックスロゴのクマ、Public Enemyとの三者協業(2018年)など
sacai阿部千登勢のsacaiとの協業。日本の前衛同士の対話として注目された

哲学とデザイン言語

アンダーカバーの哲学的基盤はパンクに根ざすが、そのパンクはロンドンの1977年のそれとは異なる。高橋盾のパンクは「システムへの抵抗」という政治的次元を持ちながら、より内面的・実存的な傷つきやすさの次元を持つ。ジョイ・ディヴィジョンとニック・ケイヴ、デヴィッド・リンチの映像、古典文学とホラー。アンダーカバーが参照する文化的源泉の多様さは、ブランドの思想的射程の広さを示す。

「カットアップ(cut-up)」はアンダーカバーの根本的な手法だ。ウィリアム・バロウズが文章において実践したカットアップ(既存のテキストを切り刻み、偶然の組み合わせから新しい意味を生成する)を服に適用することで、アンダーカバーは服の「読み」が一方向的でないことを示す。異なる素材・パターン・時代の断片が縫い合わされた服は、そこに何層もの意味と時間を宿す。

物語性(ナラティブ)へのこだわりもアンダーカバーの特徴だ。各コレクションには常にタイトルと物語があり、その物語が服の具体的な形式に影響する。「ムーン・フォールズ(月が落ちる)」「ソウル・ウィル・アルウェイズ・リメンバー(魂は常に覚えている)」。これらのコレクション名は詩的であり、服の解釈のための文脈を提供する。着用者は「美しい服を着ている」のではなく「ある物語の断片を身に纏っている」ことになる。

素材への姿勢は独自だ。最高品質の素材を使いながら、それを意図的に「傷める」(色を落とす、繊維をほぐす、縫い目を露出させる)ことで、服に「時間の経過」と「使用の痕跡」を事前に刻み込む。これは完璧な新品の服を否定し、すでに生きられた時間を持つものとしての服の価値を主張する。

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代表作品とシグネチャー

「SCAB」コレクション(2002年春夏)。国際的なブレイクスルーとなったこのコレクションは、傷ついた身体のメタファーとして服を設計した。血管と縫い目の等価性、皮膚と布地の等価性。これらは服が身体の拡張であることを極限まで追求した実験だ。

「Witch’s Cell Division(魔女の細胞分裂)」(2013年秋冬)(セルフォート・ストールスキー、ルイス・キャロルへの参照、不思議の国の暗黒面)この「ダーク・フェアリーテイル」コレクションは、アンダーカバーの物語性と暗黒美学が最も洗練された形で結晶した作品として評価される。

UNDERCOVER × Nike コラボレーション。ナイキとの長年の協働は、アンダーカバーの美学がスポーツウェアの文脈でいかに機能するかを示す実験だ。特にズームフライ・アンダーカバーシリーズは、機能的スニーカーにダーク・アヴァンギャルドの語彙を持ち込んだ達成として評価されている。

グラフィックTシャツ(継続)。各コレクションのコンセプトを凝縮したグラフィックTは、アンダーカバーの「思想の物質化」の最も直接的な形式だ。ジョイ・ディヴィジョンの「Unknown Pleasures」のビジュアル言語を参照したグラフィック、文学的引用、ホラー映画のイメージ。これらはサブカルチャー的帰属感を着用者に与える。

UNDERCOVER × sacai(2021〜)。日本の二大アヴァンギャルドブランドの対話として実現したこのコラボは、高橋盾のパンク的破壊と阿部千登勢のハイブリッド的再構成の交差から生まれた独自の美学を提示した。

UNDERCOVERがパリで初披露したのは、2002年10月。名義としては2003年春夏(2003 S/S)の「SCAB(スキャブ=かさぶた)」である。パッチを傷口のように何重にも縫い重ねた服、崩壊と再生のイメージ。クラスト・パンクの美意識を服に翻訳したこのショーで、高橋は国際的な評価を一気に獲得した。

スニーカー/スポーツの文脈では、NIKEとの「GYAKUSOU(逆走)」が別格である。2010年に始まったこのランニングラインは、「速く走るための機能」と「UNDERCOVERの美学」を両立させ、テックウェアとモードの橋渡しをした先駆けとして語られる。名前の「逆走」は、ランナーである高橋自身が公園のコースを逆向きに走る習慣に由来するという。

ストリートとの接続では、Supremeとの協業(2015年〜)が大きい。”Anarchy”を掲げたトレンチ、目元にボックスロゴをあしらったクマのグラフィック、そして2018年にはヒップホップ・グループPublic Enemyを加えた三者協業も実現した。いずれも、UNDERCOVERのパンク的なDNAをより広い文脈へ翻訳する試みである。

UNDERCOVERをはじめて買うなら|価格帯と選び方

価格帯の目安(時期・為替・古着相場により変動)。

  • グラフィックTシャツ・カットソー:2万〜5万円前後
  • スウェット・パーカー:5万〜10万円前後
  • シャツ・カットソー類:5万〜10万円台
  • アウター(コート・MA-1など):15万〜30万円前後
  • ランウェイの主要ピース・レザー:30万円〜
  • GYAKUSOU(NIKE協業)のアパレル/シューズ:1万〜5万円前後(リリース時)

最初の一着として現実的なのは、グラフィックを効かせたTシャツやカットソーである。UNDERCOVERの核である「服に物語を載せる」感覚を、最小単位で体験できる。スポーティに入るならNIKEのGYAKUSOUが価格・入手性ともに手に取りやすい。

購入は公式オンライン、直営店、ドーバー ストリート マーケット(コム デ ギャルソンの流通網)、国内主要セレクトショップ。アーカイブ(過去コレクション)はZ世代の再評価で価格が高騰しているため、古着で狙う場合は信頼できる店を選びたい。

UNDERCOVERに関するよくある質問

Q. UNDERCOVERはどこの国のブランド?

日本のブランド。1990年に東京で設立され、現在も東京を拠点とする。デザイナーの高橋盾は群馬県桐生市の出身。

Q. デザイナーの「ジョニオ」って誰?

高橋盾(たかはし じゅん)の通称。文化服装学院在学中につけられたニックネームで、ブランドの全コレクションを手がける唯一のデザイナーである。

Q. NIGOやA BATHING APEとはどういう関係?

高橋盾とNIGOは文化服装学院の同窓で、1993年に裏原宿のショップ「NOWHERE」を共同で開いた。ここからUNDERCOVERとBAPEがそれぞれ育った、いわば「裏原宿の出発点」を共有する盟友である。

Q. “We Make Noise Not Clothes”とは?

「服ではなくノイズをつくる」というUNDERCOVERのモットー。美しい服を作ることより、パンク・文学・崩壊といった「雑音(=既成の価値への異物)」を服に込めることを優先する、という宣言である。

現在の動向と文化的位置づけ

現在のアンダーカバーは、日本の独立系デザイナーブランドとして国際的な地位を確立しながら、その独立性を維持するという稀有なバランスを保っている。コム・デ・ギャルソンのエコシステムとの関係(ドーバー・ストリート・マーケットでの継続的な展開)は、アンダーカバーに批評的な文脈と国際的な流通を同時に提供している。

Z世代のファッション関心層における再評価も顕著だ。90年代〜2000年代のアーカイブピースへの関心の高まりは、アンダーカバーがその時代のアヴァンギャルドの最重要ブランドの一つとして再発見されていることを示す。特に初期のグラフィックTとカットアップジャケットは、ヴィンテージ市場で高値を維持している。

ナイキとの継続的なコラボレーションは、アンダーカバーをスニーカーカルチャーとの接点においても維持し、より広いオーディエンスへのリーチを可能にしている。ただし高橋盾はコラボの増加がブランドの本質を稀薄化させることへの警戒を常に示しており、その選択的な姿勢がブランドの価値を保護している。

まとめ

アンダーカバーとは、パンクが服になったとき何が生まれるかを30年以上にわたって実践してきたブランドだ。高橋盾の服は「美しい服」ではなく「問題提起をする服」であり、それが持つ傷つきやすさと強度のアンバランスこそが、着用者に「自分がいかなる人間か」を問いかける力の源泉だ。

日本のアヴァンギャルドという文脈においてアンダーカバーが持つ位置は、コム・デ・ギャルソンの継承者でありながら独自の言語を打ち立てた者の位置だ。川久保玲が服の概念を解体したとすれば、高橋盾はその解体された素材から、より個人的で感情的な何かを構築する。それは破壊の後の愛の仕事だ。

refer to : undercoverism.com

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