LOEWE(ロエベ)は、現存するラグジュアリーメゾンのなかでも最も古い系譜のひとつでありながら、いま最も「知的」と評されるブランドである。1846年、スペイン・マドリードの皮革工房として始まり、ジョナサン・アンダーソンの11年を経て、世界が注目するメゾンへと姿を変えた。本稿では、その出自から現在の体制までを静かに辿る。
LOEWE(ロエベ)とは?
LOEWE(ロエベ/発音は「ロエベ」)は、1846年にスペイン・マドリードで生まれた皮革工房を起源とするラグジュアリーメゾンである。スペイン王室御用達となることで地位を確立し、20世紀後半に一度は存在感を薄れさせたが、1996年のLVMH傘下入りと2013年以降の刷新を経て、「最も知的なラグジュアリー」と呼ばれる位置へと至った。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ブランド名 | LOEWE(ロエベ) |
| 創業 | 1846年(スペイン・マドリード、皮革職人の工房として) |
| ブランドを統合した人物 | エンリケ・ロエベ・ロスベルク(ドイツ人職人、1872年に参画) |
| グループ | LVMH傘下(1996年〜) |
| 現クリエイティブ・ディレクター | ジャック・マッカラー&ラザロ・ヘルナンデス(2025年4月〜・プロエンザ・スクーラー創業デュオ) |
| 前任 | ジョナサン・アンダーソン(2013〜2025年・現在はディオール) |
| 象徴するアイテム | パズルバッグ、ハンモックバッグ、アナグラムロゴ、バスケットバッグ |
| 文化事業 | ロエベ財団 クラフトプライズ(2016年〜) |
LOEWE in Brief(English Summary)
Founded in Madrid in 1846 as a workshop of Spanish leather artisans, Loewe is among the oldest of the great luxury houses still in operation, and has belonged to LVMH since 1996. Under Jonathan Anderson, who joined as creative director in 2013, it was reinvented as fashion’s most intellectual house — a place where craft, art and the Puzzle bag mattered as much as the runway. In 2025 Anderson departed for Dior, and Jack McCollough and Lazaro Hernandez, the founders of Proenza Schouler, took over all collections. Their debut, shown in Paris for Spring/Summer 2026, turned toward Loewe’s Spanish roots — sunny, tactile, and built on leather. The house remains defined by one idea above all: that craftsmanship is a form of intelligence.
創業と起源
ロエベは1846年、マドリードのスペイン人皮革職人たちの工房として始まった。ドイツ人職人エンリケ・ロエベ・ロスベルクは1872年にこの工房に加わり、自らの名のもとにブランドを統合した——いわば「ロエベ」という名を確立した中興の人物である。1905年にはスペイン王室御用達となり、ラグジュアリーブランドとしての地位を固めた。
しかし20世紀後半には存在感が薄れ、1996年にLVMHグループに買収されてからも、長らく「知る人ぞ知る」ブランドにとどまっていた。眠っていた老舗、というのが当時の姿だった。
ジョナサン・アンダーソンと「クラフトの再定義」
状況が一変したのは2013年、ジョナサン・アンダーソン(1984年生まれ、北アイルランド出身)がクリエイティブ・ディレクターに就任してからだ。自身のブランドJWアンダーソンを2008年に立ち上げていた彼が、ロエベでまず行ったのは、ブランドの「クラフトマンシップへの敬意」という核を、現代のアートコンテキストに接続することだった。
アンダーソンのロエベを特徴づけるのは、工芸品への深い参照である。陶芸、籠編み、刺繍、テキスタイルアート——これらの職人技をファッションに持ち込むことで、ロエベは「着るクラフト」というカテゴリーを作った。バスケットバッグ(籠を模したバッグ)やパズルバッグはその代表例だ。
アンダーソンのロエベはまた、アートとの対話を欠かさなかった。スタジオジブリ作品とのコラボレーション、陶芸作品からの引用——これらは商業的なコラボではなく、彼が持つ文化的参照の誠実な表現だった。「高級なのに愛嬌がある」「知的なのに楽しい」という独自の立ち位置が、ロエベを若いグローバルな顧客層に届けた。
彼は2013年に就任し、11年にわたってロエベを「最も知的なラグジュアリー」へと再定義した。だが2025年3月に退任し、その後ディオールへと移っている。
歴代クリエイティブ・ディレクターの変遷|アンダーソン以後のロエベ
ロエベを理解する鍵は「誰が指揮していたか」にある。とりわけ近年は人事が大きく動いた。時系列で整理する。
| 時期 | クリエイティブ・ディレクター | 何をしたか |
|---|---|---|
| 〜2013年 | (複数の体制) | スペイン王室御用達の老舗皮革ブランドとして、堅実だが地味な存在だった |
| 2013〜2025年 | ジョナサン・アンダーソン | ブランドを全面的に再生。パズルバッグ、クラフトプライズ、アート性の高いショーで「最も知的なラグジュアリー」へ押し上げた立役者 |
| 2025年〜 | ジャック・マッカラー&ラザロ・ヘルナンデス | プロエンザ・スクーラーの創業デュオ。長年率いた自身のブランドを離れて就任。アンダーソンの工芸路線を継ぎつつ、スペインの陽光を思わせる方向へ |
アンダーソンは2025年3月にロエベを退任し、同年ディオールへ移った。まずメンズ、続いてウィメンズとオートクチュールの統括へと役割を広げており、現代モードの中心人物のひとりとなっている。後任には、同年4月にプロエンザ・スクーラーの創業デュオ、ジャック・マッカラーとラザロ・ヘルナンデスが就任。ウィメンズ・メンズ・レザーグッズ・アクセサリーの全コレクションを統括する立場である。両者の初コレクションは、2025年10月のパリで発表された2026年春夏(SS26)で、スペインの出自を思わせる、陽光のような手触りの方向へと舵を切った。
代表アイテムとシグネチャー
ロエベを語るうえで外せないのが、アンダーソン期に生まれたバッグ群である。
**パズルバッグ(2015年)**は、複数の革のパネルを組み合わせ、折りたたんで自在に形を変えられる立体的な構造を持つ。「平面の革が立体になる」という発想そのものがロエベの工芸観を象徴し、2025年には誕生10周年を迎えた現代の定番である。実用性と彫刻的な美しさを両立した、「機能とアート」の間にあるブランドであることを示す一点だ。
**ハンモックバッグ(2016年)**は、サイドのパネルを開くとハンモックのように革がたわみ、閉じればすっきりとしたフォルムになる——一つのバッグが二つの表情を持つ可変構造が魅力で、ブランドの実験精神を最もよく表す一点といえる。
アナグラムロゴは、Lを対称に組み合わせたエンブレム。2019年に現在のかたちへとリニューアルされ、金具や革の型押しとして製品の随所に現れる、ロエベの「静かな署名」である。クラシックなモノグラムの文法を守りながら、現代的に再解釈されたこのロゴは、ブランドの認知度を大きく押し上げた。
ロエベをはじめて買うなら|価格帯と選び方
価格帯の目安(時期・為替により変動)。
- レザー小物(カードケース・キーケース):3万〜7万円前後
- 二つ折り財布・長財布:6万〜12万円前後
- アナグラム入りの小ぶりなレザーグッズ:5万〜10万円前後
- ハンモックバッグ(スモール):30万円台〜
- パズルバッグ(スモール):40万円台〜
最初の一点として選ばれることが多いのは、アナグラムの型押しが入ったレザー小物である。ロエベの核(革の質と職人技)を最小単位で体験でき、日常で使い倒せる。
バッグから入るなら、可変構造を体感できるハンモックか、象徴性で勝るパズルが王道。いずれも革の表情が一点ずつ異なるため、店頭で実物を見て選びたい。購入は直営ブティック、公式オンライン、主要百貨店で。人気モデルは偽造品も多いカテゴリのため、二次流通で買う場合は信頼できる店を選ぶこと。
ロエベ財団クラフトプライズ
2016年に設立された「ロエベ財団 クラフトプライズ」は、世界中から工芸家を発掘し表彰する国際的な賞だ。陶芸、ガラス工芸、テキスタイル、木工——ファッションとは直接関係のない工芸分野を支援するこの取り組みは、ロエベが「クラフトを守る機関」として自らを位置づけていることを示す。
これは単なるCSR活動ではなく、ブランド哲学そのものの表現である。「ロエベは1846年に工房から始まった」という出自への回帰であり、その価値観をブランド全体に浸透させる循環をつくっている。
VAULTが見るロエベの本質
ロエベはラグジュアリーの「もうひとつの形」を証明したブランドだ。権威とヘリテージではなく、知性と遊び心でラグジュアリーを定義する——その路線をアンダーソンが築き、後任のデュオが受け継いでいる。クラフトへの敬意、アートへの誠実さ、ユーモアの知性。これらが統合されたロエベは、いまなお現代のラグジュアリーのなかで最も「面白い」ブランドのひとつである。
よくある質問
Q. ロエベはどこの国のブランド?
スペイン・マドリード発祥。1846年に皮革職人の工房として始まり、現在はフランスのLVMHグループ(1996年〜)に属する。「スペインの工芸」と「フランス資本のラグジュアリー」が同居している。
Q. 現在のデザイナーは誰?
2025年4月から、プロエンザ・スクーラーの創業デュオ、ジャック・マッカラーとラザロ・ヘルナンデスが全コレクションを統括している。前任のジョナサン・アンダーソン(2013〜2025年)はディオールへ移った。
Q. パズルバッグの名前の由来は?
複数の革のパネルをパズルのように組み合わせ、折りたたんで立体的に形を変えられる構造から。2015年にアンダーソンが手がけ、ロエベの工芸観を象徴する現代の定番となった。
Q. ロエベ財団クラフトプライズとは?
2016年に設立された国際的な工芸の賞。世界中の工芸家から作品を募り、現代における手仕事の革新と卓越を表彰する。「ロエベは1846年に工房から始まった」という出自への回帰であり、ブランドの哲学を最もよく表す事業である。
VAULTが見るLOEWEの本質
LOEWEはラグジュアリーの「もうひとつの形」を証明したブランドだ。権威とヘリテージではなく、知性と遊び心でラグジュアリーを定義する——アンダーソンはそれに成功した。クラフトへの敬意、アートへの誠実さ、ユーモアの知性——これらが統合されたLOEWEは、現代のラグジュアリーブランドのなかで最も「面白い」ブランドだ。





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