doublet(ダブレット)とは?|LVMHプライズを獲った「悪ふざけ」の精度

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遠目にはヴィンテージのプリントTシャツ。近づいて初めて、それが刺繍だったと気づく。手間もコストもプリントより高い技法を、あえて安っぽいプリントに見せかける倒錯。doublet(ダブレット)は、2012年に群馬県出身の井野将之(いの・まさゆき)が、パタンナーの村上尚寿とともに立ち上げた日本のブランドである。このブランドの仕事は「見慣れた日常着に、一瞬の違和感を仕込むこと」だ。2018年、この悪ふざけの精度がLVMHプライズという世界最高峰の登竜門を獲得した。

doubletは「ベーシックの中の異物」で勝負するブランドである

ストリートブランドの多くは、ロゴや色で自己主張する。doubletのやり方は逆だ。まず徹底してベーシックな形を作り、そこに一つだけ嘘を混ぜる。代表作「Chaos Embroidery(カオス刺繍)」のフーディは、遠目にはヴィンテージのプリントTシャツのように見える。近づいて初めて、それが刺繍でびっしり再現されていることに気づく。プリントより手間もコストもかかる技法を、あえてプリントに見せかける倒錯。この「二度見させる」設計が、doubletのほぼ全アイテムに共通する文法だ。

2018年LVMHプライズ|ストリートウェアが本丸に認められた年

2018年、doubletは102の国籍から約4,000件が応募したLVMHプライズを受賞し、30万ユーロの助成とLVMHによる1年間のメンタリングを獲得した。当時のファッション業界では「ストリートウェアがついにラグジュアリーの本丸から公認された」事件として報じられた。パリのオートクチュールでもニューヨークのミニマリズムでもない、日本のユーモアが世界基準の賞を獲ったという意味でも大きな出来事だった。

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ランウェイも「悪ふざけ」の舞台にする

doubletのショーは服と同じくらい、演出そのものが名物だ。モデルがホバーボードに乗って登場したり(2023年秋冬)、着ぐるみのような衣装が紛れ込んだり、コレクションのテーマに「ファンダム(推し活)」を据えて会場全体をファンの熱狂の場に見立てたり(2025年春夏)。笑いを起こすことをランウェイの目的の一部にするデザイナーは、モードの世界では珍しい。深刻さで勝負するブランドが多いなかで、doubletは「面白いことは真剣にやる」という一点で独自の座を築いている。

doubletを知るための整理

項目 内容
設立 2012年。井野将之(デザイナー)と村上尚寿(パタンナー)の2人体制
代表アイテム Chaos Embroidery(プリントに見せかけた刺繍)のフーディ・トラックパンツ
受賞歴 2018年LVMHプライズ受賞
ショーの特徴 ホバーボード登場(2023AW)、ファンダムを主題にした演出(2025SS)など、笑いを設計に組み込む
拠点 東京。パリ・コレクションにも定期参加
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in the vault=ここだけの話

doubletの面白さは、実は「ジョークが上質な仕立ての上に乗っている」ことにある。刺繍の密度も、パターンの精度も、ふざけて見える服のわりに驚くほど本気だ。ギャグを言うために、まず腕を磨く。この順番が逆にならないところが、他の”面白ブランド”との決定的な違いになっている。

ラグジュアリーの世界は長らく「シリアスであること」を格の証明にしてきた。doubletがLVMHという最も格式ばった場所で認められたことは、その前提への静かな反論でもある。真剣に作れば、笑いも金庫室に収まる資格を持つ。そんなことを、この2人組は証明し続けている。

まとめ

  • doubletは2012年、井野将之と村上尚寿による日本のブランド。ベーシックな服に一つだけ違和感を仕込む設計が核
  • 代表アイテムは「Chaos Embroidery」。プリントに見せかけた刺繍という、手間を隠す倒錯した技法
  • 2018年、102カ国から約4,000件が応募したLVMHプライズを受賞し、ストリートウェアの評価を一段引き上げた
  • ランウェイも笑いの舞台にする稀有な姿勢だが、技術の裏付けは本気。「ふざけるために腕を磨く」ブランドである
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