Fear of God(フィア オブ ゴッド)は、ジェリー・ロレンゾが2013年にロサンゼルスで設立したブランドである。ファッションの正式な教育を受けていないロレンゾが、信仰(God)への敬意と恐れをブランド名に込めた。野球一家に育ち、音楽業界で働いた後にファッションへ転向した異色の経歴こそが、Fear of God の独自の美学の源泉である。
Fear of God を一言で表すなら「ラグジュアリーとストリートの最も完璧な統合」である。オーバーサイズのシルエット、ニュートラルなカラーパレット(ダスティな茶・グレー・黒・白)、高品質なカシミアやレザー——これらが組み合わさり、「高価なのに着崩している」「上質なのに力が抜けている」という、矛盾を抱えた美学を成立させている。
Fear of God(フィア オブ ゴッド)とは?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ブランド名 | Fear of God(フィア オブ ゴッド) |
| 設立 | 2013年(ロサンゼルス/萌芽は2011年) |
| 創業者 | ジェリー・ロレンゾ(本名 Jerry Lorenzo Manuel Jr.) |
| 創業者の経歴 | 正規のファッション教育なし。父はMLBの選手・監督を務めたジェリー・マニュエル。フロリダA&M大卒、ロヨラ大学シカゴ校でMBA。Diesel 勤務などを経て独学で創業 |
| 拠点 | ロサンゼルス |
| ライン | Fear of God(本ライン)/ Fear of God ESSENTIALS(エッセンシャルズ) |
| 象徴するアイテム | ヘビーウェイトのフーディ、ロングT、Air Fear of God 1 |
| 主な協業 | Nike(2018)、Ermenegildo Zegna(2020)、adidas(2023〜) |
| コレクション形式 | 本ラインを「Collection 01〜08」と番号で管理 |
Fear of God in Brief(English Summary)
Founded in Los Angeles in 2013 by the self-taught designer Jerry Lorenzo, Fear of God built a new grammar for American luxury — one drawn less from European ateliers than from sport, scripture, and the quiet authority of well-worn clothing. Lorenzo, the son of an MLB manager, numbers his mainline as “Collections” rather than seasons, treating each as a chapter rather than a trend. Alongside the elevated main line sits ESSENTIALS, the widely accessible diffusion label that turned the heavyweight hoodie into a global uniform. Through partnerships with Nike (the Air Fear of God 1), Ermenegildo Zegna, and later adidas, the brand has become a rare case of an independent American house earning genuine luxury standing.
創設者と起源
ジェリー・ロレンゾの本名は Jerry Lorenzo Manuel Jr.。父はMLBの選手・監督を務めたジェリー・マニュエルである。本人はファッションの正規教育を受けておらず、フロリダA&M大学を卒業後、ロヨラ大学シカゴ校でMBAを取得。Diesel のセールス部門などでの勤務を経て、独学でブランドを立ち上げた。
ブランドとしての本格始動は2013年だが、その萌芽は2011年に遡る。2023年の初ランウェイが「ブランド10周年」と銘打たれたことも、2013年を起点とする見方と整合している。
哲学とデザイン言語
ジェリー・ロレンゾは敬虔なキリスト教徒であり、その信仰が Fear of God のすべてに浸透している。ブランド名の「God」は文字通りの意味である。完璧なものを作ることへの謙虚さ、自分の能力への誠実な恐れ——これが Fear of God という名前の根拠だ。
ロレンゾにとって服を作ることは「神への捧げもの」である。最高品質の素材を使い、最も正直なデザインをすることが、自分の信仰と一致する行為だ。この精神性が、Fear of God の服に、他のストリートウェアにはない「誠実さ」を宿らせている。
その思想は、コレクションの数え方にも表れている。Fear of God は本ラインを「春夏/秋冬」ではなく「Collection 01〜08」と通し番号で管理してきた。流行を追う“シーズン”ではなく、ブランドの物語が進む“章”として服を提示する——その姿勢の表れである。
Fear of God のライン構成|本ラインとESSENTIALSの違い
Fear of God の世界は、性格の異なる二つのラインで成り立っている。価格も流通も狙いも明確に違うため、構造を知ると入口が見える。
| ライン | 位置づけ・特徴 |
|---|---|
| Fear of God(本ライン) | コレクションを「Collection 01〜08」と番号で発表する本体。上質なウール、カシミア、レザーを用いた、静かで重厚なアメリカン・ラグジュアリー。価格は最上位 |
| Fear of God ESSENTIALS | 2018年に始まったディフュージョン(普及)ライン。フーディやスウェットなど日常着が中心で、本ラインより大幅に手頃。米国では PacSun などを通じて広く流通し、「ラグジュアリーの民主化」と評される。多くの人にとっての入口 |
ESSENTIALS と本ラインは、デザイン言語(ニュートラルな色、ゆったりしたシルエット、着古したような佇まい)を共有しつつ、素材のグレードと価格帯で明確に分かれている。Fear of God のメインラインが上位の価格帯に位置するのに対し、ESSENTIALS はおおむね1万円台〜3万円台で同じ美学を届ける。「良いデザインはすべての人の手に届くべきだ」というロレンゾの意図的な戦略であり、ブランドの裾野を一気に広げたラインである。
ヘビーウェイトのフーディ:ストリートウェアの再定義
Fear of God のフーディは、単なるスウェットシャツではない。ヘビーウェイトのフリース素材、ドロップショルダー、伸びたようなロングボディ——これらは意図的に「着古した」テイストを作り出すための設計である。新品なのに使い込んだような質感、清潔なのにだらしなく見えるシルエット——これがロレンゾのアプローチだ。肉厚なフリース、落ちた肩線、長めの着丈によって、ストリートウェアを“静けさ”の側へ引き寄せた一着として記憶される。
このフーディが示すのは「ラグジュアリーはピシッとしていなくていい」という宣言である。サヴィル・ロウのスーツがラグジュアリーの一形態なら、ヘビーウェイトのフーディも同等にラグジュアリーたりうる——Fear of God はその命題を、プレミアムな価格設定で実証した。
代表作品と協業
Fear of God を象徴するのは、まずヘビーウェイトのフーディとロングTである。だが、協業の系譜もまた、このブランドの立ち位置を雄弁に物語る。
2018年、Fear of God は Nike と協業し、ブランド初のシグネチャースニーカー「Air Fear of God 1」を世に送り出した。本ラインの第6コレクション(Sixth Collection)の一部として発表されたこの一足は、バスケットボールのDNAをラグジュアリーの語法で再構築し、パフォーマンスシューズの機能性と高級服の文脈を接続した。即完売とリセール高騰を招いたこの靴は、野球一家に育ったロレンゾの出自とスポーツへの偏愛を最も雄弁に語るアイテムである。
2020年には Ermenegildo Zegna(エルメネジルド ゼニア)との「Fear of God exclusively for Ermenegildo Zegna」を発表。ゼニアのアーティスティック・ディレクター、アレッサンドロ・サルトーリと組み、イタリアの仕立て文化とアメリカのリラックスした語法を縫い合わせた。コレクションは同年9月から店頭に並んだ。
そして2023年4月、ブランド10周年に合わせたロサンゼルス・ハリウッド・ボウルでの初ランウェイ(第8コレクション)で、ロレンゾが率いる adidas とのバスケットボールライン「Fear of God Athletics」がお披露目された。Nike から adidas へ。スポーツとの対話を絶やさないことこそ、ロレンゾの一貫した態度である。
Fear of God をはじめて買うなら|価格帯と選び方
価格帯の目安を以下に示す(時期・為替により変動する)。
- ESSENTIALS のTシャツ・ロングスリーブ:6,000〜1万5,000円前後
- ESSENTIALS のフーディ・スウェット:1万5,000〜3万円前後
- ESSENTIALS のスウェットパンツ:1万5,000〜2万5,000円前後
- 本ライン(Collection)のニット・アウター:10万円台〜数十万円
- Air Fear of God 1(中古市場):流通量により大きく変動
最初の一着として現実的なのは、間違いなく ESSENTIALS である。とりわけ象徴的なフーディは、ブランドの核(着古したような佇まいとニュートラルな色)を最小単位で体験できる。サイズはゆったりめに設計されているため、普段よりワンサイズ下げる選択も検討に値する。
本ラインへ進むなら、まずはニットやアウターから。素材のグレードが ESSENTIALS とは別物であることが、手に取ると分かる。購入は、ESSENTIALS なら PacSun・公式オンライン・SSENSE など、本ラインは公式オンラインおよび一部のラグジュアリー取扱店が中心である。人気が高く模倣品も多いため、二次流通では信頼できる店を選びたい。
VAULTが見るFear of Godの本質
Fear of God は「ストリートウェアがラグジュアリーである」という命題の、最も成熟した形である。Off-White が「境界線を消した」のだとすれば、Fear of God は「最初から境界線がなかった」。ロサンゼルスの陽光とキリスト教的な誠実さから生まれたこのブランドは、ニューヨークのストリート文化やヨーロッパのクチュールとは異なる、第三の「ラグジュアリーの形」を確立した。
よくある質問
Q. Fear of God と ESSENTIALS は何が違う?
どちらもジェリー・ロレンゾが手がける同じブランドである。Fear of God が上質素材を用いた本ライン、ESSENTIALS は2018年に始まった手頃なディフュージョンラインだ。デザインの思想は共通だが、素材のグレードと価格帯が大きく異なる。多くの人の入口は ESSENTIALS である。
Q. 創業者ジェリー・ロレンゾは何者?
本名 Jerry Lorenzo Manuel Jr.。父はMLBの選手・監督を務めたジェリー・マニュエルである。本人はファッションの正規教育を受けておらず、大学院でMBAを取得後、独学でブランドを立ち上げた。敬虔なクリスチャンであり、ブランド名もその信仰観に由来する。
Q. Air Fear of God はどことの協業?
Nike である(2018年)。ブランド初のシグネチャースニーカー「Air Fear of God 1」を生み、即完売した。なお、ロレンゾは後に adidas のバスケットボール部門を率いることになり、adidas との「Fear of God Athletics」は2023年にお披露目された。
Q. コレクションに番号が付いているのはなぜ?
Fear of God は本ラインを「春夏/秋冬」ではなく「Collection 01〜08」と通し番号で管理している。流行を追う“シーズン”ではなく、ブランドの物語が進む“章”として服を提示する——その思想の表れである。
VAULTが見るFear of Godの本質
Fear of Godは「ストリートウェアがラグジュアリーである」という命題の最も成熟した形だ。Off-Whiteが「境界線を消した」なら、Fear of Godは「最初から境界線がなかった」。ロスアンゼルスの陽光とキリスト教的な誠実さから生まれたこのブランドは、ニューヨークのストリート文化やヨーロッパのクチュールとは異なる、第三の「ラグジュアリーの形」を確立した。





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