A-COLD-WALL*(エー・コールド・ウォール)|コンクリートとブリュタリズムが生んだロンドンのダーク美学

A-COLD-WALL* Brand

A-COLD-WALL*(エー・コールド・ウォール)は、英国の階級構造と建築の記憶を素材へと翻訳するロンドンのブランドである。ストリートウェアというより、身体がどのように都市を移動するかを問い続ける実験の場——そう呼んだほうが、このブランドの輪郭は正しく結ばれる。創業者サミュエル・ロスは、自らのレーベルを「社会的建築のための素材研究」と表現してきた。本稿では、その出自とコンセプト、代表アイテムと協業、そして最初の一着の選び方までを静かに辿っていく。

A-COLD-WALL*(エー・コールド・ウォール)とは?

A-COLD-WALL* は、2015年にサミュエル・ロスがロンドンで設立したブランドである。ロスはOff-Whiteのヴァージル・アブローのもとでアシスタントを務めたのち、自身のレーベルを立ち上げた。ブランド名「A-COLD-WALL*」は、英国の階級構造——公営住宅やコンクリートの壁に象徴される労働者階級の風景——への応答として選ばれている。

このブランドは、労働者階級的な英国の美意識をラグジュアリーファッションへと変換する。コンクリート、鉄、機能的なデザイン要素といったインダストリアルな素材感を、上質な生地と仕立てと組み合わせることで、ほかにはない佇まいの服を生み出してきた。

項目内容
ブランド名A-COLD-WALL*(エー・コールド・ウォール)
設立2015年(2014年とする資料もある)・ロンドン
創業者サミュエル・ロス(Samuel Ross/1991年生・英国)
拠点ロンドン
コンセプト英国の階級構造・建築・インダストリアルを主題にした「身体のための社会的建築」
主な協業Nike、Converse、Dr. Martens、Timberland
象徴するアイテムテクニカルな防護服由来のアウター、ストラップ/ハーネス、ハイブリッドニット
関連事業SR_A(Samuel Ross & Associates・2019年設立の産業デザインスタジオ)、彫刻・現代美術

A-COLD-WALL* in Brief(English Summary)

Founded in London around 2015 by Samuel Ross, A-COLD-WALL* began as what its founder called a “material study for social architecture.” Born in Brixton in 1991 and trained as a graphic designer, Ross built the label around the textures of Britain’s class system — concrete, industrial workwear, and the protective clothing of labour, reframed as luxury. Less a streetwear brand than an ongoing inquiry into how the body moves through a built environment, A-COLD-WALL* has extended that language into sculpture, industrial design, and collaborations with Nike, Converse, and Dr. Martens.

創業者サミュエル・ロス

サミュエル・ロス(Samuel Ross)は1991年、ロンドン・ブリクストンに生まれた。カリブ系の家庭に育ち、グラフィックデザインとイラストレーションを学んだのち、独学に近い形でファッションへと越境していった人物である。ブランド名「A-COLD-WALL*」は、英国の階級構造——公営住宅やコンクリートの壁に象徴される労働者階級の風景——への応答として選ばれた。

ロスはファッションデザインにとどまらず、ビジュアルアート、グラフィックデザイン、彫刻、インスタレーションといった領域を横断して活動する作家でもある。建設現場のオーバーオールや工場の防護服といった労働者階級のユニフォームを、ラグジュアリーの文脈へと引き上げ、労働の美学に尊厳を与える——その姿勢は、ドキュメンタリーのようだと評されてきた。

サミュエル・ロスを理解する鍵は、彼がファッション単独の人ではないという点にある。グラフィックデザイン出身の彼は、2012年頃から**ヴァージル・アブロー(Off-White創業者、のちにルイ・ヴィトン メンズ アーティスティック・ディレクター)**の最初期のデザインアシスタントとなった。アブローは生涯にわたり彼のメンターであり、その「ディアスポラ的・多分野横断的なものづくり」の姿勢はロスに色濃く受け継がれている。

独立後のロスは、ファッションの枠をはるかに超えて活動している。2019年にはパートナーと**SR_A(Samuel Ross & Associates)を設立し、Hublot、Kohler、Beats(Apple)、Oakleyなどと産業デザインの領域で協業してきた。彫刻家・現代美術作家としても、ロンドンのWhite Cube、ニューヨークのFriedman Bendaで個展を開いている。2023年にはMBE(大英帝国勲章メンバー)*を授与された。A-COLD-WALL は、こうした「拡張する作家」の中核に置かれた実験場なのである。

コンセプトとデザイン言語

A-COLD-WALL* のアイデンティティの核には、建築のブリュタリズム(1950〜70年代の建築運動)がある。機能から立ち上がる美しさを体現するブリュタリズム建築のように、このブランドのデザインも実用性を優先する。ストラップ、ジップ、テクニカルな生地は、装飾ではなく構造の一部として組み込まれている。

現代という時間軸のなかで見れば、A-COLD-WALL* は、リック・オウエンスやマルジェラが切り拓いたダークなアプローチを、現代英国の労働者階級的な視点から再解釈する存在でもある。ラグジュアリーを「単に高価なもの」ではなく「文脈において意味を持つもの」として定義し直す——その姿勢が、いまのダークファッションの一角を形づくっている。

代表アイテムと協業

A-COLD-WALL* の服は、装飾ではなく構造で語る。建設現場の作業着、工場の防護服、ハイヴィズ(高視認性)ベストといった労働の衣服が、テクニカルな素材と仕立てによって都市生活のための「身体の鎧」へと翻訳される。ストラップやハーネス、ジップ、ボンディング加工は、その思想を最も直接に示すディテールである。

協業の系譜も、この「インダストリアル×ラグジュアリー」の言語をより広い文脈へ運んできた。Nikeとの協業は2017〜2018年のAir Force 1に始まり、続くZoom Vomero +5で大きな注目を集めた。近年はAir Max Plusを、剥き出しのレザーや色の経年変化を取り込んだ手法で再構築している。

協業相手主なアイテム・時期
NikeAir Force 1(2017〜2018)、Zoom Vomero +5(2018)、Air Max Plus(2023)
ConverseSponge Crater(2022)
Dr. Martens1461 / 1460(2020〜)
Timberland6-Inch Boot / 3-Eyeボートシューズ(2023)

A-COLD-WALL* をはじめて買うなら|価格帯と選び方

価格帯の目安(時期・為替・流通により変動)。

  • グラフィックTシャツ・カットソー:2万〜4万円前後
  • スウェット・フーディ:5万〜9万円前後
  • テクニカルなシャツ・ニット:6万〜12万円前後
  • アウター(ジャケット・パーカ):12万〜30万円前後
  • 協業スニーカー(Nike等):セカンダリー市場で2万〜10万円台と幅が大きい

最初の一着として現実的なのは、グラフィックTやスウェットである。ブランドの核(素材・プリント・建築的なロゴワーク)を最小単位で体験できる。シルエットとレイヤリングの設計に踏み込みたいなら、テクニカルシャツやジップ付きのアウターが入口になる。スニーカーから入るなら、流通量の多いNike協業モデルが手に取りやすい。

購入は公式オンライン(a-cold-wall.com)、END.やSSENSEなどの主要オンラインセレクト、国内取扱店。サイズはオーバーサイズ設計が多いため、初回は試着できる店舗かサイズ表の確認をすすめたい。

よくある質問

Q. A-COLD-WALL はどこの国のブランド?*

英国・ロンドンのブランド。創業者サミュエル・ロスは1991年ロンドン・ブリクストン生まれの英国人デザイナーである。

Q. 創業者とヴァージル・アブローの関係は?

ロスは2012年頃、アブローの最初期のデザインアシスタントを務めた。アブローは生涯のメンターであり、その多分野横断的なものづくりの姿勢を強く受け継いでいる。ただしA-COLD-WALL* はロス自身が独立して立ち上げたブランドで、Off-Whiteのラインではない。

Q. ブランド名「A-COLD-WALL」の意味は?*

英国の階級構造——公営住宅やコンクリートの壁に象徴される労働者階級の風景——への応答として名づけられた。ロス自身は「社会的建築のための素材研究」と表現している。

Q. どんなアイテムが代表的?

工事・工場の防護服に由来するテクニカルなアウターやベスト、ストラップ/ハーネス、ボンディング加工のディテールが象徴的。Nike、Converse、Dr. Martens、Timberlandとのフットウェア協業も知られている。

VAULTが見るA-COLD-WALL*の本質

A-COLD-WALL*はダーク・ファッションの現在形だ。リック・オウエンスやマルジェラが1990〜2000年代に確立したダーク美学を、21世紀のブリティッシュ・ワーキングクラスの視点から再解釈している。

A-COLD-WALL*を着ることは、ある種の知的な態度の表明だ——「私はコンクリートと機能美の中に美しさを見る」という宣言。それはラグジュアリーを「高価なもの」ではなく「深い文脈を持つもの」として定義する現代的なラグジュアリー観の最も明確な体現だ。

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